エネルギー環境教育の現場から

エネルギー&環境問題は、地球規模で最も重要であり、真剣に取組まねばならないテーマとなってきています。 国内でも国&省庁、地方自治体の行政レベルから、大学や各種研究機関などの研究レベル、企業のビジネス展開、そして教育の現場まで真剣に取組まれています。 本シリーズでは、“エネルギー環境教育”に関連する各種現場を訪問取材して、先進的な取り組みや苦労話、成功例などをご紹介いたします。

岩手大学 エネルギー教育ネットワーク

第2回はエネルギー教育地域拠点大学と地域先行拠点大学として「いわてエネルギー教育ネットワーク」を設立され、エネルギー教育の出前授業も年30回を超えて、パワフルに活動されている岩手大学工学部 准教授 高木 浩一先生に活動の内容についてお聞きしました。

エネルギー拠点大学に応募したきっかけは

エネルギー拠点大学に採択されたのは2005年でした。それ以前、北東北では弘前大学や八戸工業大学、秋田大学などが拠点大学になっており、岩手だけが、県内にエネルギー実践校があるのに拠点大学がなく、大学としてはあまりサポートできていない状況でした。
八戸工大の藤田先生からの紹介もあり、岩手大学内で検討した結果、たまたま運良く(?)私に白羽の矢が当たり応募いたしました。また、エネルギー拠点大学に申請を検討したとき、高校生の理系進学率向上のためには小・中学校から理科の面白さを知ることが大切だと思い、エネルギー・環境教育を基盤に理科教育向上に少しでも貢献できればと思いました。

拠点大学としての活動状況はいかがでしたか

2005年にエネルギー拠点大学に採択されたのですが、1年目は主にネットワークの作りに力を注ぎました。他の地域が会の名前を「研究会」としているところが多いのですが、まずはネットワークの構築に重点を置き、参加者がコミュニケーションしながら同じ目線で活動できる組織にしたいと考えました。ですから2006年には名称も「いわてエネルギー環境教育ネットワーク」に変更しました。
主な活動内容としては、出前授業や理科工作教室の開催などがあります。活動の中では、岩手県の行政機関やいろんなNPOとの連携が大きかったと思います。特に岩手県が作ったエネルギー環境学習車「エコカーゴ」でも拠点大学として協力でき、教材選定などにも関われたことはその後の活動において、大いに役立っています。

《おもな活動内容》
1)学校などへの出前授業
2)岩手県および市町村や科学館・NPOとの連携
3)エネルギー環境教材集の発刊
4)エネルギー環境学習系統図の作成と教材開発
5)教材のパッケージ化

いわてエネルギー環境教育ネットワーク組織図

いわてエネルギー環境教育ネットワーク組織図

どのようなイベントに力を入れられているのですか

色々なイベントに参加していますが、特に出前授業や理科教室などの実験講師は年間30回くらい呼ばれて行きます。リピートで毎年行う学校があり、年々増えてきている状況ですが、どの会場でも子供たちはものづくりや実験が大好きですので熱心に聞いてくれます。それ以外はエネルギー環境学習会の開催や科学館のイベントの協力などを行っています。


「2009.3.3 雫石小学校での授業風景」

矢巾東小学校がエネルギー教育賞を受賞されましたが

そうなんですよ。最優秀賞まで受賞できるとは思っていませんでしたので、うれしかったです。先生方が、エネルギー環境学習系統図を作成し、それに基づき学習プログラムや教材開発にも力を入れた成果だと思います。もちろん、東北電力さんや大学など、いろんな連携もあっての結果だとは思いますが。岩手県からは、矢巾東小学校以外にも、昨年は葛巻小学校と黒沢尻工業高校の2校が優秀賞を受賞しました。岩手県のエネルギー教育関係者のちょっと自慢です。ケニスさんの教材も多数購入して活用させていただきました(笑)


「2007.11.7  電気新聞に掲載」

教材はどんな物を活用されていますか

そうですね。やはり一番は「手回し発電機」ですね。今年度から「新学習指導要領」にも入っていますがエネルギー環境教育には必要ですね。昨年センター試験の物理問題にも「手回し発電機」が出ていました。体験重視の問題で、実験で使っていないと答えにくい問題のように感じました。それ以外には「3色LED」や「ソーラーカー」、「ペルチェ素子」もよく利用しています。また、うちオリジナルの教材の「紙おむつ電池」などもよく使用します。いずれもシンプルで子供が工夫して使える教材がいいですね。

  
「子供達は興味いっぱい!」

教材メーカーに期待することは?

最近の教材は性能もデザインもよくなりました。ただし、小中学校で使う教材はあまり機能が高いものは向いていないように思います。教材はできるだけ安価でシンプル、そして児童や生徒が工夫して使えるものを開発してほしいと思います。パパートのコンストラクショリズムとも共通する考え方です。

また今年度から小学校の新学習指導要領では「電気・エネルギー」に関連する単元が増え、系統立てて学習することになっています。単元で必要な教材の紹介だけではなく、3年生から6年生までを系統立て、その教材を活用した「実験のストーリー」もあると、利用する側は判断する材料が増えて、助かるのではと思います。

小学校の先生は理科専科が少ないので需要はあると思います。私はケニスさんの商品をボックスに入れパッケージ化して活用集をつけて「エネルギー実験ボックス」として紹介していますので参考にしてください。


※エネルギー実験ボックスの内容
   ・ケニス 電気を通すもの通さないもの実験器
   ・ケニス 手回し発電機
   ・ケニス 発電原理説明器(発電コイル)  など

岩手大学からの支援やサポートはいかがでしたか

この活動を支えているのが、岩手大学を中心とした先生方や教育関係者などです。特に、岩手大学はESD“持続可能な社会のための教育”に力を入れていて、我々の活動もこの一環としても位置づけられています。小学校や科学館などで出前授業、工作教室、理科教室などを、教育学部、農学部、人文社会学部、そして工学部など多くの先生が実施されています。そうした、多くの教育関係方々の活動があって、エネルギー環境学習も実り多いものにもっていけるように思います。
もちろん、大学もこのような活動を積極的に支援していて、それは教材費やイベント実施に派生する金銭面のこともあれば、事務処理などの実務面、またいろんな人の活動を有機的につないでいくための情報面のこともあります。われわれの活動を実りあるものにするためにも、大学のサポートは欠かせませんでした。

最後に今後の思いを聞かせてください

エネルギー拠点大学や先行拠点大学として活動してからよく思いますが、やはりエネルギー環境教育や理科教育には「体験」が不可欠だと思います。それには子供だけではなく教師や親も一緒になって活動することが大切です。レイチェル・カーソンは「センス・オブ・ワンダー」の中で感受性を“種子を育む肥沃な土壌”と表現して、体験を通じて感受性を育む大切さを述べています。新学習指導要領でもエネルギーや環境を学習する時間が増えており、教材を有効に活用できるように今後もいろんな機関と連携し活動していきたいと考えています。

取材を終えて

高木先生は行動的で非常にパワフルに活動されている方だと感心いたしました。またご自身の研究は「放電プラズマの環境応用」ですが、そのほかにバイオ利用でシイタケの電気刺激による増産実験なども行われており、テレビや新聞の取材でよく取り上げられています。九州男児でお酒も強く、また温厚で人当たりの良い高木先生に今後のご活躍をご期待いたします。