手軽にバイオ実験を体験!

本バイオ実験キットで登場する主な実験操作について、その原理をご紹介します。
電気泳動法(アガロースゲル電気泳動法)とは?

電気泳動法は、DNAやRNAなどの核酸をそれらの電気的な性質を利用して分離する方法です(本実験キットはアガロースゲルを使用したアガロースゲル電気泳動法を体験できます)。 核酸は「−」の電荷を帯びているため、電場に置かれると、アガロース(※)のゲルの網目構造内を+極側に移動します。長いDNA断片は網目構造内をゆっくりと(引っかかりながら)動くのに対して、短いDNA断片はより速く(あまり引っかからずに)動くことから、アガロースゲル電気泳動法では、DNA断片を長さによって分離することができます。

※アガロース
アガロースとは、「寒天」の主要な成分のことです。二種類の糖が結合しあって網目状の構造をとることから、生体高分子、特にDNAの分子量を分析する際によく利用されます。

DNAの電気的性質

クリックすると拡大DNAは、リン酸基・塩基・デオキシリボース(糖の一種)によってできる「ヌクレオチド」とよばれる分子が直鎖状につながった構造をとっています。このうちリン酸基と塩基が荷電しています。DNAの場合、塩基の荷電は二重鎖構造をとるために打ち消されているので、水溶液中ではリン酸基のみが荷電しており、したがってDNAはヌクレオチド数、すなわち分子量(※)に比例した電荷を持っていることになります。これはDNAの電気的な性質で最も重要な点です。 アガロースゲル電気泳動法では、このようなDNAの電気的な性質を利用します。アガロースゲル内に電圧をかけることで電場を生じさせ、DNA断片を長さによって分離します。DNAは二重らせんとよばれる単一な構造をとっているため、DNAは分子量による移動度の差によって分離することができます。

※DNAの分子量
DNAはヌクレオチドが直鎖状につながった構造をとるため、分子量はそのヌクレオチド数に比例します(塩基の種類によって多少の誤差が生じます)。一般的にDNAの大きさは分子量で表わさずヌクレオチドの長さ(塩基対数、base pair:bp)で表わします。

制限酵素(DNAのハサミ)とは?

細菌は自分以外のDNAを切断・分解することで、ウイルスやファージなどの外から侵入してくるDNAを排除しています。この外来DNAの排除メカニズムは「制限」と呼ばれています。この「制限」で中心的な役割をする酵素が「制限酵素」です。制限酵素は特定のDNAの配列を認識して切断することが知られています。

制限酵素の性質

クリックすると拡大制限酵素は、特定のDNAの配列を認識し切断する酵素です。大部分の制限酵素は4塩基、6塩基または8塩基の特定のDNAの配列を認識し切断します。制限酵素の大きな特徴は、その認識するDNAの配列がパリンドローム(回文)構造をとっていることです。パリンドローム構造とは、「シンブンシ(新聞紙)」のように前から読んでも後ろから読んでも同じことを指しますが、2本鎖のDNAにおけるパリンドローム構造とは右図のような配列(灰色四角)を指します。本実験キット(DNA切断キットFSB4)で用いる制限酵素Hind IIIは右図のパリンドローム配列(赤字)を認識して特定の箇所(点線の部分)で切断します。

DNAリガーゼ(DNAのノリ)とは?

クリックすると拡大DNAを連結する「ノリ」として働く酵素がDNAリガーゼ(ligase)です。本実験キット(DNA結合キットFSB5)で使用するDNAリガーゼ(DNA ligase)は、組換え大腸菌株由来のT4 DNA ligaseです。T4 DNA ligaseは、1本鎖DNAとして突出した末端配列が相補的(A-T, G-Cの組み合わせ)なDNA断片同士を連結する活性を持っています。右図は、制限酵素HindIIIによって切断されたDNA断片がT4 DNA ligaseによって連結する模式図を示しています。DNA断片A(青字)およびDNA断片B(赤字)の突出末端部位は、互いに相補的な配列になっています。これらの断片が、T4 DNA ligaseの働きにより1本のDNA断片に連結されます。

PCR法とは?

Polymerase Chain Reaction法(PCR法)は、短時間かつ簡便に目的とするDNA断片を大量に増幅する技術です。この技術は特定の遺伝子配列を人工的に増幅できるため、バイオサイエンスの研究において不可欠な技術となっています。さらにPCR法は、病原菌感染の検査や遺伝子組換え作物混入の検査といった医療や食品の安全管理の分野にも応用されており、その用途は多岐に渡っています。

PCR法の原理

PCR法では、増幅したい塩基配列の両端に相補的な、20塩基前後のオリゴヌクレオチド鎖からなるプライマーを足がかりとし、耐熱性のDNAポリメラーゼを用いてDNA塩基配列を増幅していきます。この操作は、3段階の温度変化を経て行われます。それを繰り返し行なうことで、大量のDNA塩基配列を得ることができるのです。下図は、1サイクル目の反応を表したものです。

    クリックすると拡大
  1. テンプレートDNA(増幅したい配列の鋳型となるDNA鎖)・耐熱性ポリメラーゼ・プライマーなどを加えた反応溶液を94℃まで加熱することで、2本鎖であったテンプレートDNAの水素結合を切断し、1本鎖に解離させます。

  2. 次に、反応溶液の温度を55℃〜60℃程度まで下げることによりプライマー配列をテンプレートDNAの相補的な塩基配列に結合させます。プライマーは20塩基程度の1本鎖DNAであり、テンプレートDNAの特定の配列に特異的に結合するよう設計してあります。1本鎖に解離したテンプレートDNAとプライマーDNAが2本鎖を形成し、耐熱性ポリメラーゼがDNA鎖を合成するための「足場」となります。

  3. さらに、反応液を耐熱性ポリメラーゼが働くための至適温度である72℃まで上昇させることで、DNA鎖が合成されます。この作業を連続して行うことで、増幅したいDNA断片が大量に増幅されます。
クリックすると拡大

3サイクル目以降の反応では、設定したプライマーの間にあるDNA断片が急速に増幅されます。PCR反応では、理論的には無限大にDNAを増幅できますが、実際には耐熱性ポリメラーゼの失活・プライマーやdNTPの枯渇などによって増幅率は低下し、得られるDNA断片はほぼ一定量となります。

Copyright © KENIS, Ltd. All rights reserved.