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インタビューシリーズ 第11回
先生に聞く!シリーズ第2弾!!第00回○○大学○○部教授○○○○先生に聞く!
先生先生
プロフィール
東京理科大学学長
藤嶋 昭(ふじしま あきら)先生
1942年東京都生まれ。
横浜国立大学工学部卒業。東京大学大学院博士課程修了後、テキサス大学博士研究員などを経て、東京大学工学部教授。1967年春、水溶液中の酸化チタン電極に強い光を当てたところ、酸化チタン表面で光触媒反応が起きることを発見(本多‐藤嶋効果)。2004年日本国際賞を受賞。東京大学特別栄誉教授、日本化学会会長、日本学術会議会員などを歴任。2010年から東京理科大学学長に就任。

「自然に親しんだ少年時代」

―――どんな少年時代を過ごされましたか?
藤嶋先生:  私は昭和17年に東京都で生まれましたが、すぐに愛知県へ疎開しました。現在は豊田市に編入されましたが、香嵐渓に近い足助という山の中の町です。戦後の何もない時代で、みんな貧乏でしたから子供も山へ薪をとりに行ったりしていました。ちょうど小学生5年か6年生の時、尺貫法からメートル法に単位がかわって、担任の先生から「これが1メートルです」と教えて頂いたことを今でも覚えています。とても丁寧に教えてくださって、ビーカーに水を入れて「これが1リットルですよ」とか、「これが1キログラムですよ」というふうに、一つ一つ具体的に示してくださいました。
遊び道具も何もなかったので、山や星や自然を相手に遊んでいました。流れ星を見たり、飛んでいる蛍の数を数えたりして、大変面白かったですね。身の回りの自然に興味を持つというこの頃の体験が、理系に興味を持つきっかけになったのだと思います。

「教えることの楽しさを知った出前講座」

―――大学で大変面白い経験をされたとか?
藤嶋先生:  化学という学問で一番大切なのは量子力学です。大学2年生の春休みに、朝永振一郎先生の「量子力学」を読もうと友人に呼びかけて合宿をしました。アルバイトで1万円ほど稼いで本を買って、伊豆の民宿に泊まりこんで自炊しながら合宿をして10日間で読破しました。夏休みには、再びアルバイトをして鉄道の周遊券を買い、いろんな場所を旅して回ろうと考えました。宿泊先を確保するために「夏休みの特別授業」というアイデアを思いつき、福井県と島根県の教育委員会に手紙を書いて、数校の中学校から快諾をいただきました。つまり特別授業をするかわりに学校の宿直室にただで泊まらせて頂いたのです。大学の囲碁部の友人たちと4人で、英語・数学・理科・社会と教える教科を分担して、私は理科を担当しました。今でいう「出張夏季講習」のようなものです。
3年生の夏休みには、東北へ行こうと考えて、青森県の竜飛岬にある中学校へ行きました。生徒の一人が灯台の息子で、授業のあと海で泳いでサザエを採ったりしましたね。理科を中学生に教えながら、私は教える楽しさというものを実感しました。自分が面白いと感じていることを、「理科は、こんなに面白いよ」と教えると、ちゃんと伝わるのですね。このように常に楽しみながら学問と向き合い続けたことが、その後の私の人生の大切な下地になっていると思います。

「光触媒の発見」

―――大学院に進まれてからは?
藤嶋先生:  研究者を目指して進学した東京大学の大学院では、燃えに燃えて研究に打ち込みました。研究は何のためにやるのか。たとえ今すぐには使えなくても、100年後の人類に役立つ研究をしようと。そして博士課程2年制の時に「光触媒」を発見しました。光触媒というのは、光を照射することで触媒作用を示す物質のことですが、応用技術として空気清浄機や建物の外壁、高速道路の照明器具、トイレや手術室のタイルや自動車のサイドミラーなど、私たちの生活の様々な場面で活用されています。現在、この発見は一緒に論文を書いた本多健一先生と私の名前から「本多・藤嶋効果」と呼ばれて世界中に知られています。

「天寿を全うするための科学技術」

―――藤嶋先生が、これから目指しておられることは何でしょうか?
藤嶋先生:  光触媒は、今では身の回りの工業製品や建築物などに当たり前のように使われており、社会に対する波及効果や経済効果に対して、国の内外から高い評価を頂いていますが、私はまだまだ研究に対して燃えています。世の中にはわからないことがいくらでもあって、研究テーマには事欠きません。私は、光エネルギー問題や環境問題に関係する研究をしてきたので、最終的にはこの分野で人類をハッピーにしたいと考えています。全ての人が、健康で快適な生活空間で暮らすために役立つ研究を続けたいと思っています。
―――先生の著書「天寿を全うするための科学技術」に書いておられることですね。
藤嶋先生:  科学技術の最終目的は何かと問えば、どんな人も望んでいる天寿を全うすることに寄与することであると思っています。天寿を全うすることができるためには、健康を維持することが不可欠ですが、それには少なくとも必要な食料があり、生活を保つための電気エネルギーなどに不足がなく、なるべく快適な生活空間が必要となります。光触媒は、空気をきれいにでき、水もきれいになり、殺菌をすることができ、建物などが汚れないようにできるなど、快適な空間を作ることができる科学技術の一つです。人類に役立つイノベーションや社会変革を起こすような発明や発見を生み出す余地はまだまだあります。そこにこそ、われわれ研究者の醍醐味があるのです。

「感動こそが原動力」

―――理系を目指す学生や若い理科教員に向けて、一言お願いします
藤嶋先生:  学問というものがいかに面白いものか、そのためには身の回りの自然や物事に興味を持ち、たくさんの感動を味わうことが大切であることを、私は大学生に最初の授業で話しています。 理系文系も年齢も問わず、感動こそが次のステップへの原動力だからです。感動を味わうためには、日頃から何事にも疑問を抱くことです。取るに足らないようなことでも、なぜと問う態度を持ち続けることが、感動を呼び覚ますチャンスを拡げると同時に、ひらめきを生む土壌にもなります。理科の先生には、自分自身が理科を面白いと感じて、目を輝かせて「こんなに面白いよ!」と、燃えて授業をしていただきたいと思います。
―――本日は、示唆に富む話をたくさんして頂き、ありがとうございました。


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